奈良公園といえば、自由に歩き回る鹿とのふれあいが人気の観光スポットです。
見た目は人懐っこくて可愛らしいですが、実は「鹿に襲われた」「怖い思いをした」といった声も少なくありません。
特に鹿せんべいを持っているときや、発情期・子育て期には注意が必要です。
この記事では、奈良公園の鹿が怖いとされる理由や危険なタイミング、実際のトラブル例や安全に楽しむためのポイントまで詳しく解説します。
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奈良公園の鹿はなぜ「怖い」と言われるのか?

奈良公園の鹿は、観光客にとても慣れており、近づいても逃げたりはしません。
むしろ人を見かけると、自ら近づいてくることさえあります。
そのため「かわいい!」「人懐っこい!」と感じる人も多いでしょう。
しかし、そうした「親しみやすさ」の裏には、野生動物としての本能や予測できない行動が潜んでいます。
特に「怖い」と言われる理由のひとつは、鹿せんべいを巡る接触です。
観光客が鹿せんべいを持ったまま歩いていたり、じらして渡そうとすると、鹿が突進してきたり、噛みつこうとすることがあります。
また、触られることを嫌がって突然怒り出すケースも。
さらに、SNSなどでは外国人観光客が鹿にハグしようとしたり、無理に写真を撮ろうとしてトラブルになった例も報告されています。鹿はペットではなく、あくまで「野生動物」だという認識が薄れてしまうことで、思わぬ事故につながるのです。
また、小さな子どもやペット連れで訪れる場合は、体格差や反応速度の違いから、怖い思いをしやすくなります。
「かわいいから大丈夫」「人に慣れているから安全」という思い込みこそが、鹿を“怖い存在”に変えてしまう要因なのです。
鹿が危険になるタイミングとは?【発情期・子育て期など】
奈良公園の鹿は普段は穏やかで、のんびりと過ごしている姿をよく見かけます。
しかし、一部の時期になると突然気性が荒くなり、人に対して攻撃的になるケースもあります。
鹿が特に危険になるのは、以下の2つのタイミングです。
オス鹿の発情期(9月〜11月)

秋の奈良公園は観光シーズンでにぎわいますが、ちょうどこの時期はオス鹿の発情期でもあります。
発情期のオスは、縄張り意識や繁殖本能が強くなり、角で突く・威嚇する・突進するといった行動を見せることがあります。
特に鹿せんべいを持っている人に対しては興奮しやすく、奪おうとして突進される例も多いです。
角が伸びた状態なので、当たれば大ケガになる恐れもあります。
奈良では、この時期にオスの角を落とす「鹿の角きり行事」が行われるのも、こうした事故防止のためです。
メス鹿の出産・子育て期(5月〜7月)

春から夏にかけては、メス鹿が出産・子育てをする時期になります。
赤ちゃん鹿がかわいらしくてつい近づきたくなりますが、母鹿は非常に敏感になっており、わが子を守ろうとする本能から攻撃的になることがあります。
特に、小鹿に触ろうとしたり、写真を撮るために距離を詰めたりすると、母鹿が急に威嚇してくることがあります。
見た目は穏やかでも、突然頭突きや足蹴りをしてくる場合があるため注意が必要です。
それ以外の時期でも油断は禁物

発情期や子育て期以外でも、急な音や動き・触れられることなどに反応して、鹿が驚いたり、攻撃的な反応を見せることがあります。
特に子どもや外国人観光客が無邪気に近づくことで、予期せぬトラブルにつながることも。
また、鹿同士のけんかに巻き込まれてケガをしたというケースもあるため、鹿同士が威嚇し合っている様子が見られたら近づかないようにしましょう。
実際に鹿に襲われた人の体験談まとめ【SNS・観光客の声】
奈良公園の鹿は、基本的には人に慣れているものの、「怖い思いをした」「襲われかけた」といった声も多く見られます。
ここでは、実際にSNSや観光レビューで報告されている体験談をいくつか紹介します。
鹿せんべいを持っていたら追いかけられた

「修学旅行で鹿せんべい買った瞬間、後ろから4頭くらいに囲まれてパニック。せんべいを地面に投げて逃げた…マジで怖かった。」(Xより)
鹿は“鹿せんべい=もらえる”と学習しており、持っているだけで一気に群がってくることがあります。
逃げようとした際に後ろから押されたり、噛まれたりすることも。
子どもが鹿に頭突きされそうになった

「3歳の娘が鹿を見て笑ってたら、急に近づいてきて頭を突き出された。横から抱きかかえて避けたけど、本当にヒヤッとした。」(Instagramより)
小さな子どもは背が低いため、鹿と目線が近くなり、警戒されたり、遊びと勘違いされたりすることがあります。
親がすぐ近くにいることが重要です。
鹿同士のバトルに巻き込まれた

「写真撮ってたらいきなりドン!と横から体当たりされて転倒。オス同士が角突きしてて、こっちまで吹っ飛ばされた…。」(旅行ブログより)
発情期にはオス同士の激しいバトルが起こることも。
たまたま近くにいた人が巻き込まれるケースもあるので、鹿がにらみ合っていたり角を突き出している様子があれば、すぐに距離を取りましょう。
外国人観光客が触ろうとして噛まれた
「外国の人が鹿をハグしようとしてて、鹿が嫌がって噛んでた。写真撮る前にやめといた方がいい。」(Tripadvisorより)
鹿はペットではありません。
過剰なスキンシップは嫌がります。
特に背後から近づいたり、大きな声を出したりするのもNGです。
奈良公園で鹿に襲われる原因とは?【行動別に解説】

奈良公園の鹿が観光客に襲いかかる原因は、人間側の行動がきっかけになっていることがほとんどです。
鹿は決して凶暴な生き物ではありませんが、ちょっとした勘違いや刺激によって防衛本能や食欲が刺激されると、攻撃的な行動に出ることがあります。
以下では、特にトラブルにつながりやすい行動を具体的に解説します。
① 鹿せんべいを持ったまま歩く/じらす
鹿せんべいを買った瞬間から、鹿の視線はあなたに集中しています。特に人通りの多いエリアでは、複数の鹿が一斉に集まってくることもあり、囲まれてパニックになる例が多数報告されています。
また、あげるふりをしてじらしたり、ポケットに入れて見せびらかしたりする行為は、鹿を刺激して噛みつきや頭突きの原因になります。
② 撫でる・触ろうとする
奈良公園の鹿は人に慣れているため、近づいても逃げません。そのせいか、ついつい撫でたり、肩に手を置いたりしてしまう人がいますが、これは危険な行為です。
特に顔や背後から手を出すと、驚かせたり警戒させてしまい、噛みつき・蹴りなどの反応が返ってくることも。
③ 食べ物の匂いやビニール袋を持っている
鹿は嗅覚が優れており、お菓子やパンなどの匂いに反応して近づいてくることがあります。
鹿せんべい以外の食べ物を出していなくても、バッグやポケットの中から匂いが漏れていると、ターゲットにされることがあります。
また、ビニール袋のカサカサ音を「鹿せんべいの音」と勘違いして寄ってくる例もあります。
④ 犬や猫などの動物を連れている
鹿はもともと臆病で、特に犬の吠え声や動きに強いストレスを感じます。
ペットを連れて訪れる際には、できるだけ距離を取り、吠えないように配慮しましょう。ゲージやバッグに入れることが推奨されます。
このように、鹿とのトラブルの多くは「かわいいから」と無防備に接することによるものです。
奈良公園の鹿によるケガを防ぐ方法【事前対策と現地マナー】
奈良公園で鹿とふれあう体験は、旅の思い出としてとても魅力的です。
ただし、相手はあくまで野生の動物。
正しい知識と行動を心がけることで、トラブルを未然に防ぐことができます。
ここでは、鹿によるケガを避けるための対策やマナーを紹介します。
事前に知っておきたい「鹿との接し方」
奈良公園の鹿は人に慣れているとはいえ、飼いならされているわけではありません。
公園内を自由に歩き回る“野生動物”であることをまず理解しておきましょう。
特に子ども連れや海外からの観光客は、この認識が甘くなりがちです。
鹿せんべいは素早くあげるのが基本
鹿せんべいを買ったら、できるだけ早めに渡すようにしましょう。
じらしたり、焦らしたり、ポケットにしまってチラ見せするような行為は、鹿をイライラさせて攻撃的な行動を引き起こす原因になります。
「シカサイン」で鹿にアピールしよう

鹿せんべいをすべてあげ終わったら、両手を高く上げて見せるポーズをとることで「もう持っていない」と鹿に伝えることができます。
これは「シカサイン」と呼ばれており、鹿との不要な接触を避ける有効な手段として奈良の観光ガイドなどでも推奨されています。
撫でない・ハグしない・背後から近づかない
可愛いからといって、撫でたり触れたりしたくなる気持ちはわかりますが、これは危険行為です。
特に外国人観光客の中にはハグを試みようとする人もいますが、鹿は驚いて反撃することがあります。
また、背後から近づくのもNG。
死角からの接近は鹿にとって「敵」だと感じさせてしまうことがあります。
子どもとペットには特に注意
小さなお子さんは鹿にとって「予測できない動きの対象」であり、攻撃されやすくなります。
常に大人がそばについて、勝手に近づかないよう見守ることが大切です。
また、ペット連れの場合は必ずゲージやキャリーバッグに入れた状態で訪れましょう。
犬の鳴き声は鹿にとって大きなストレスになります。
正しい接し方を知っていれば、鹿と安全にふれあうことができ、旅の思い出としても楽しいものになります。
鹿は怖いけれど大切な存在|奈良公園が守る文化と歴史

奈良公園の鹿は、「怖い」「襲ってくるかも」といった一面を持ちながらも、長い歴史と文化の中で特別な存在として守られてきました。
その背景を知ることで、鹿への見方も大きく変わるかもしれません。
神の使いとしての歴史
奈良公園の鹿は、古来より春日大社の神の使い(神鹿)とされてきました。
平安時代、藤原氏の氏神である「春日神」が白鹿に乗って奈良にやって来たという伝説があり、それ以降、鹿は神聖な存在として大切にされてきたのです。
この伝説により、鹿を傷つけることは重罪とされ、江戸時代までは鹿を殺すと死刑になるほどの厳罰が科されていたこともありました。
天然記念物としての保護
現在、奈良公園の鹿は国の天然記念物に指定されています。
これは単なる観光資源としてではなく、文化的・自然的価値を持つ存在として正式に保護されているということです。
公園内では、一般の人が勝手に鹿にえさをあげたり、触ったりすることも本来は慎重に行うべき行為。鹿を尊重し、奈良の文化の一部として接する姿勢が求められます。
地域と共に生きるシンボル
奈良の街を歩いていると、鹿はもはや「動物」というより、地域と共に生きる存在のように感じられます。
信号を渡ったり、観光客の間をすり抜けて歩いたり…そんな光景は、奈良ならでは。
地元の人々や観光業者による保護活動も盛んで、「鹿愛護会」などが怪我をした鹿の保護や鹿せんべいの普及に取り組んでいます。
「怖い」と思うのは自然な感情ですが、背景にある文化や歴史を知ることで、鹿に対するリスペクトが生まれます。そしてその思いこそが、安全な観光と共生の第一歩になります。
【まとめ】奈良公園の鹿は怖い?安全に楽しむための心得
奈良公園の鹿は、普段は穏やかで人懐っこい存在として親しまれていますが、あくまで野生動物であることを忘れてはいけません。
発情期や子育て期には気性が荒くなり、人間の行動によっては攻撃的になることもあります。
「鹿が怖い」と感じる原因の多くは、知らずに行ってしまった行動や、無意識の刺激によるトラブルです。
鹿せんべいのあげ方、距離感の保ち方、触らない・じらさないといった基本マナーを守るだけでも、危険を大きく減らすことができます。
安全に鹿とふれあうための3つの心得:
- 鹿はペットではなく、野生の動物だと理解する
- 食べ物や動きで刺激しない(鹿せんべいは速やかに)
- 距離をとり、無理に触れ合おうとしない
鹿に対するリスペクトと少しの注意があれば、奈良公園での鹿との時間はきっと素敵な思い出になるはずです。かわいさの裏にある“本能”も理解しつつ、安全で楽しい観光をお楽しみください。